お役立ちコラム

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外食主要19社 2021年9月期決算まとめ

外食主要各社の9月決算期の売上と利益の状況をまとめております。各社ともコロナ禍の影響を受け続けている中、多くの企業で構造改革が進み増益となりました。各社の取り組みも合わせてみていきます。

外食主要19社 2021年9月期決算まとめ 売上・利益

業種企業名売上高前年同期比売上総利益率前年同期比営業利益前年同期比純利益前年同期比
ディナーレストランコロワイド(IFRS)第2四半期78,401108%54%+0.2%3,464+12,377915+6,703増収増益
ディナーレストランチムニー第2四半期2,92548%71%+1.4%-2,491+1,2701,815+5,194減収増益
ディナーレストランワタミ第2四半期28,630100%52%+0.0%-3,078+2,435-3,003+4,152増収増益
ディナーレストラングローバルダイニング第3四半期7,221180%19%+31.9%665+1,769897+2,171増収増益
ファストフードゼンショーHD第2四半期316,964110%53%-3.7%8,637+5,8736,432+8,344増収増益
ファストフードトリドール(IFRS)第2四半期76,642121%76%+1.6%3,988+7,5395,378+7,451増収増益
ファストフード松屋フーズHD第2四半期45,173101%65%-0.6%-2,136+319790+3,321増収増益
ファストフードモスフード第2四半期38,542114%49%+1.1%2,108+2,2611,973+2,680増収増益
ファストフード王将フード第2四半期40,463103%69%-1.0%3,192+8014,274+2,576減収増益
ファストフードALサービスHD第3四半期32,323119%52%+0.0%3,588+4883,663+1,949増収増益
ファストフードマクドナルドHD第3四半期236,551111%21%+0.4%28,547+3,19017,937+1,834増収増益
ファストフード幸楽苑HD第2四半期12,49196%72%+1.2%-971+232341+1,284増収増益
ファストフードKFC第2四半期48,109111%43%-1.0%4,019+6222,788+1,186増収増益
ファミレスすかいらーくHD(IFRS)第3四半期189,56689%69%+1.3%7,420+28,5632,371+16,995減収増益
ファミレスロイヤルHD第3四半期58,81896%65%+2.7%-7,159+8,835-4,437+14,192減収増益
ファミレスジョイフル第1四半期10,93677%68%-0.0%-1,111-762950+710減収増益
回転寿司F&LC(IFRS)第4四半期240,804117%54%+1.5%22,901+10,84013,815+7,358増収増益
回転寿司カッパ・クリエイト第2四半期33,092108%49%-2.6%-2,063-353152+2,020増収増益
焼肉物語コーポ第1四半期15,73095%66%-1.2%-32-1,755816-457減収源益
ベンチマーク先19社中18社が純利益で増益、営業利益では19社中15社が増益という結果でした。減益した企業は純利益では物語コーポレーション1社が、営業利益では物語コーポレーション、ジョイフルそしてカッパ・クリエイトの3社となりました。売上では19社中13社が増収となっています。特にファミリーレストランは3社揃っての減収となりました。増益の要因としては売上高の回復もあげられますが、それ以上に粗利率の改善や販管費の低減、さらには協力金・助成金の収入の影響が大きいようです。中でもすかいらーくHDは2億円近い減収でありながら、売上総利益の改善と販管費の低減により28百万円の営業利益増益、ファミレス3社中唯一の黒字転換を達成しています。一方で新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言等による影響は依然大きく、営業赤字企業は未だ8社ある状況です。
直近10月の売上状況も合わせてご覧ください。【2021年10月度】既存店前年比速報【外食主要28社】

各社の取り組み

前回の記事、外食主要19社 2021年6月期決算まとめではコロナ禍における各社の取り組みとして経営、財務、新規事業、既存事業の強化の4つの側面から紹介しました。各社とも経営面、財務面の取り組みは一巡したようで助成金収入とも相まって足下の経営危機は脱した感があります。そうした中、今後は引き続き新規/既存の事業構造改革が進められていくことでしょう。”コロナ後”においては集客構造の変化、原価や人件費を中心とした費用構造の変化、そして競争環境の変化が既に始まっています。今回はそうした”コロナ後”を見据えた各社の取り組みを紹介していきます。

集客構造の変化

テイクアウトやデリバリーの需要は引き続き高止まりを維持、イートインの売上を伸ばすにはこれまで以上に”選ばれる理由”を明確にする必要があります。
コロナ禍ではイートインの外食需要が大きく縮小する中、テイクアウトやデリバリーの需要が急伸しました。出前館やUberEatsが多額の販促費をかけ利用者を伸ばしたほか、この2社に続くデリバリー事業者が多く現れています。テイクアウト、デリバリー利用における消費者の利便性が大きく向上し、利用経験者が一気に増えたわけですが、これが”コロナ後”だからと言って再びイートインに回帰するとは考えずらいようです。サンプル数は少ないのですが次のようなアンケートがありました。シェアダイン「【緊急事態宣言解除明けアンケート調査】外食意欲は年代によって二極化!?今年の年末イベントは前倒し派が多勢」緊急事態宣言後、外食を利用しなかった人は全体の46%にのぼりますが、その理由として”感染への不安”以上に多かったのは”家で楽しみたい/十分楽しめる”でした。また、リモートワークなどを背景に”誘い自体が減ったので機会がない”も感染への不安に次ぐ割合となっています。リモートワークへの賛否はありますが引き続き出社の機会は減ったまま、オフィス街の人出は以前のようにはならないだろうと思われます。そしてそれ以上に、消費者は”外食しなくても家で食事を楽しめる”ことに気付いてしまいました。そのため、今後はその店が”選ばれる理由”が重要になってきます。”立地のよさ”や”手軽さ”、”低価格”だけでは集客できず、”店内体験”の品質の高さがイートインにおいては重視されていくことでしょう。一方で拡大したテイクアウト、デリバリーの売上を維持し収益性を高める取り組みが始まっています。マクドナルドがこれに対応する店舗設計の見直しを進めていることは以前ご紹介いたしました。(日経Web版「マクドナルド、調理能力2倍に 宅配需要を狙い店舗刷新」2021/5/7)スシローは非接触のテイクアウト受渡用ロッカーの導入を進めています。(同社HP「自動土産ロッカー」)さらにすかいらーくやスシロー、マクドナルドは自社配送網の構築を進めています。スシローの中期経営計画ではデリバリーへの注力が謳われていました。(同社HP「決算説明資料」)コロナ禍のために飲食業の経営破綻が続き店舗数はまだ減少を続けることでしょう。しかしだからといって、残った店舗の売上が単純にコロナ前に戻ることはありません。それ以上の集客構造の変化が起きています。イートインの”選ばれる理由”やテイクアウト、デリバリーの拡大に取り組むことが必須と言えそうです。

調達環境の変化

食材始め調達環境は見通せない状況が続くでしょう。以前のような価格、量での確保が必ずしもできるわけではありません。
国や地域によっては新規感染者数が高い状況が未だ続いており国際的なサプライチェーンに支障をきたしております。国内産地でも零細な経営や高齢化の進んだところではコロナ禍の需要消失をきっかけに衰退が進むことでしょう。そうした中、”ミートショック”(日経電子版「輸入食肉、年末に一段高も 牛と鶏、在庫減で高値調達」2021/10/15)や”チキン・ショック”といった言葉もメディアに出てきています。量販店向けの価格も同様ですが、外食チェーンでも原材料費の高騰を理由に値上げに踏み切る動きが出てきています。(日経電子版「吉野家、牛丼7年ぶり値上げ」2021/10/30)また、回転寿司チェーンでは自社グループで養殖を手掛けるような動きも出てきました。(日経新聞「くら寿司、魚養殖の新会社」2021/10/29)スシローは中期経営計画の中で”安定調達の上流戦略”を明らかにしています。(同社HP「決算説明資料」)大手チェーンを中心にサプライチェーンそのものを抑えにいく動きは今後も強まることでしょう。中小規模の経営においても先手を打って調達環境の把握に努めることが欠かせなくなってきます。

人事を取り巻く環境の変化

少子高齢化は言わずもがなですが、賃金と労務コストの上昇に対応が必要となってきます。
コロナ禍は健康上の格差と経済上の格差を浮き彫りにし、これが政府の対応方針を迷走させ結果的に多くの批判を生み出したのだと思います。健康上の格差とは感染が生命に関わるか否かで、特に高齢者が弱く若者が強い状況となりました。経済的な格差は経済活動の縮小が家計に関わるか否かで、非正規雇用者などが弱く、年金生活者、資産家などが強い状況となりました。その結果、それぞれの格差に由来する悲劇がメディアによって拡散され、政治はこれらの弱者を救済し、今後も救済し続ける動きになっていると言えるでしょう。最近10月にもありましたが、最低賃金は今後も上昇し続けるものと思われます。そして少子高齢化と経済弱者に対するセーフティネットの拡充などを背景に社会保障費の負担もまた上昇が見込まれます。非正規雇用が中心となっている外食、小売業間では人材獲得競争となり、大都市圏中心に賃金相場が上がっていくことでしょう。そのような中、柔軟な人材提供を可能とする株式会社タイミー(https://timee.co.jp/)のような事業が注目を集め大きな資金調達を実現させています。(PRTIMES「​タイミー、海外機関投資家を中心に総額53億円のシリーズD資金調達を実施」)また、大手チェーン店を中心に配膳ロボットを導入に省人化を図る動きが加速しています。(日経電子版「すかいらーく、配膳ロボを2000店に導入」2021/10/18)費用対効果、活用方法はまだ手探りの感がありますが、いずれ個人店でも導入しやすいような費用とノウハウ提供が実現されることでしょう。
コロナだったからと客足が戻るのをお祈りしているだけで、経営が前に進むことはありません。ここで紹介したような集客の問題、調達の問題、人材の問題にきちんと立ち向かわないことには”コロナ後”は決して訪れないとこと思います。 
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