第9部 組織づくり
Organization Management
そのためには、お店で働く人たちに活き活きとした仕事ぶりをさせなくてはなりません。
そこで必要なことが、お店の組織づくりです。
大切なことは、働く一人ひとりが、明確な任務と目標を持つことで、会社やお店としての総合力を高めてゆくことです。
仕事と責任が明確になっているからこそ、活き活きと働くことができるのです。
組織づくりの考え方
安定した店舗を目指すためには、人の採用・オリエンテーション・トレーニング・評価と報酬・ワークスケジュール表・退職と解雇といった一連の流れを完全に把握することです。
我々のビジネスにおいては、この流れを確実に運用することが出来て、はじめて店舗運営がうまくいき、店内組織が機能することになります。
店舗組織がうまく機能し、高いQ・S・Cのスタンダードをお客様に提供できれば、結果的に来客数の増加につながり、売上と利益のバランスも取れるようになります。
つまり、店長がオペレーションを身に付け、人の流れを把握し、部下一人ひとりを成長させていくことが、店舗運営にとって最も重要なことになります。
すなわち、店舗のQ・S・Cのスタンダードは、そこで働く人たちが明るく活き活きと仕事が出来るようになることだといえます。
我々は、我々の仕事の目的である「お客様の満足と感動を得る」という責任を、一人ひとりの成長から店舗組織を作り上げることで果たしていきます。
それはまさに、良いトレーニング、よちコミュニケーション、良いモチベーションに裏付けされた店舗における人材育成のことです。
人を活かし、店舗の組織を作り上げ、お客様に繰り返しご利用いただけるお店にすることこそが、私どもの目指す真のプロ店長の姿です。
組織づくりの流れ
- 採用計画 ・・・ 戦力分析、年間のリクルートとトレーニングの流れ、採用計画
- 募集 ・・・ リクルートの5Steps、店舗イメージ・スタッフメイト・お格様からの採用・店外活動・大手媒体ほか
- 面接 ・・・ PAの応募者の受付、面接のタイムスケジュール、面接のチェック(態度、容姿、協調性、有用性)
- 採否の決定 ・・・ 採用の決定と不採用の決定(その人の能力に基づいて行い、主観的な好みや人間性で判断してはいけない)
- オリエンテーション ・・・ オリエンテーションのポイント【リラックスさせる、多くのことを一度に教えない、フォローアップオリエンテーション】
- トレーニング ・・・ オペレーションの分解と作業割当、トレーニングの4段階手法
- 評価と報酬 ・・・ 明確な時給設定(定期昇給、能力昇給、職務昇給)
- ワークスケジュール ・・・ 作業割当とレイバーコストコントロール
- 退職と解雇 ・・・ 退職のルールと手続き、解雇のルールと手続き
- ピープルプラクティス ・・・ 良いトレーニング、良いコミュニケーション、良いモチベーション、ポジティブな環境づくり
年間リクルートとトレーニングの流れ
営業計画 | 人に入替 | 稼働計画 | 採用計画 | トレーニング | ミーティング | |
1月 | 正月営業 | 冬の入替 | 通常W/S | 既存TR | 4月以降の勤務 | |
2月 | 通常W/S | 春の入替 | 新人TR | |||
3月 | 謝恩会 春休み営業 | 春の入替 | 通常W/S | 春の入替 | 新人TR | 春休み出勤交渉 |
4月 | 入社・入学 歓迎会 | G/WのW/S | G/Wトレーニング 短期TR | G/Wの出勤交渉 | ||
5月 | G/W営業 | 通常W/S | 既存TR | |||
6月 | 夏の入替 | 通常W/S | 夏季採用 | 既存TR | 夏休み出勤交渉 | |
7月 | 暑気払い・賞与 夏休み営業 | 夏の入替 | お盆W/S | 短期採用 | 短期TR | お盆の出勤交渉 |
8月 | 夏休み営業 お盆営業 | 通常W/S | 短期TR | 9月以降勤務 | ||
9月 | 秋の入替 | 通常W/S | 秋の入替 | 既存TR | ||
10月 | 運動会 学園祭 | 通常W/S | 既存TR | 4月以降の勤務 | ||
11月 | 文化祭 | 通常W/S | 短期採用 | 短期TR | 12月出勤交渉 | |
12月 | 忘年会・賞与 クリスマス | 正月W/S | 短期採用 | 短期TR | 正月の出勤交渉 |
人の採用から戦力の流れ
【 採用 】
やみくもに経費を使って、大手媒体を用いて人を採用しても、オリエンテーションからトレーニングまでのしくみが確立していないと、人は定着せず、採用退職、採用退職の繰り返しになってしまいます。
また、年間のリクルートの流れを理解せずに活動を繰り返しても、効果的な採用活動は実施できません。
より良い人材を効率的に採用できるように、募集~面接~採用のポイントを理解してリクルート活動を展開します。
【 教育 】
店舗に新人を迎えられる環境が整っていますか?
店舗のルールがきちんと守られていますか?
仕事への意欲の高い新人のPAをどういう店舗環境出迎え、トレーニングをしていけるかが、定着化へのポイントです。
自店舗の環境整備と、オリエンテーション実施のポイント・トレーニングの4段階手法を取り入れて、日々自らの成長を実感できることが重要です。
【 定着 】
人の定着には、日常の業務の中での仕事の役割と責任範囲が明確になっていることと、その成果に対しての評価が常に行われていることが基本です。
その評価の一つは、仕事の出来栄えに対しての評価であり、もう一つは公平な基準に基づく報酬が明確になっていることです。
【 戦力 】
お店の人たちの更なる戦力化を図ることで、お客様の満足とお店の収益性、それに、我々の働く環境の改善が可能になってきます。
そのためには、お店の人たちに活き活きと働いてもらうために、戦力と勤怠状況、それに勤務態度等で昇給と昇格を決める公平な方法を確立していく必要があります。
これは、定期的に勤怠状況や勤務態度を評価し、正しく給与や時給に反映させるためです。
また、お店の人達にも仕事に対する責任を持っていただくことで、働く環境の改善と、よりレベルの高い店舗運営を目指してゆくためのものです。
リクルートの5 Steps!
Step1. 店舗イメージ
応募者を引き付ける最初のステップは、自店舗の職場環境を分析することです。
大変採用が厳しい時代ではありますが、毎月毎月の大量の採用を計画しているのであれば、必ず店舗環境に問題があります。
それは、人が定着しないという問題点です。
その問題を解決しないで採用を進めると、また同じことの繰り返しで、最後には本当に人が来なくなります。
Step2. スタッフメイト
既存のスタッフの知人・友人を新しい仲間として迎えられる仕組みを制度化してゆきます。
店舗のインフォメーション等を使用して、採用したい曜日と時間帯をアナウンスし、スタッフの方々の協力を仰ぎます。
Step3. お客様からの採用
お客様にターゲットを絞って、ポスター等でアプローチをします。
店舗の仕事の楽しさをオペレーションで表現できれば必ず採用できます。
Step4. 店外活動
求人チラシ・ポスターなどのツールを使っての募集活動です。
募集ポスターの掲示、大学や専門学校の学生課へのアプローチやポスター掲示、募集チラシの配布、それに、新聞への募集チラシの折り込み、ホームページを利用してのリクルートもあります。
Step5. 大手媒体
最後の手段として大手媒体を利用します。
特に掲載するタイミングにより実績に大きな差が発生します。
また、掲載原稿の大きさ・位置・内容(コピー・写真)によって効果に大きな差が出ますので事前打ち合わせが重要になります。
最近はネット媒体によるリクルートも有効です。
応募者からの問い合わせ
応募者からの問い合わせは、電話を通じて行われるのが一般的です。
つまり、最初の電話の対応が、応募者にとってのお店を印象付けるスタートになります。
そこで店舗内では、応募者からの問い合わせがあった際の対応についての事前教育が必要に案ってきます。
電話問い合わせに対して感謝の意を伝え、スムーズに店長(不在時は時間帯責任者)につなげることが大切です。
特に大手媒体を用いて応募をかける場合、「問い合わせチェックリスト」を作成しておき、漏れや間違いの発生を事前に回避しておくべきです。
面接
基本的に応募者の面接は店長が行います。
応募者が持参する履歴書については返却すべき場合がありますので、面接用のシートを店舗側で準備しておくとよいでしょう。
何人もの応募者を面接していると記憶だけでは不鮮明になりますので注意してください。
面接8つのポイント
- 応募者の緊張をほぐし、質問しやすい環境を作ります。
- 話しやすい(身近な)話題から話させます。
- 全体の80%を応募者に話をさせます。
- 一人20分を目安の面接時間にします。
- 言葉遣い・本人の興味・協調性をよく観察します。
- 身だしなみについては、直す必要がある場合、直せるかを確認します。
- 基本的には採否は改めて連絡をし、即断は避けます。
- 応募に関しての感謝を伝えます。応募者もお客様の一人です。
採否の連絡
基本的に面接日から、2~3日以内には、採否の連絡を店長が入れます。
面接時に、通知日を事前に知らせておくとよいでしょう。
不採用の場合も必ず連絡をします。
採用の場合は、初日の出勤日・雇用契約のための持参物などの連絡事項も行います。
お店の組織づくり
安定した店舗運営が、お客様の満足を得るためのスタートになります。
それは、お店の組織化によって店舗運営が安定し、その安定した店舗運営がお客様の満足と感動につながり、そして、お店の成長を可能にしてくれるからです。
そんなお店の組織化には、大きく2つに分かれます。
一つが、マネジメントチーム(Management Team)で、もう一つが、オペレーションチーム(Operation Team)です。
マネジメントチーム(Management Team)
まず、マネジメントチームですが、マネジメントチームには、店長や支配人、それに、料理長やアシスタントといったお店の責任者の人たちのことです。
このマネジメントチームの一員である以上は、PA(パート・アルバイト)の責任者であっても、果たすべき任務は同じです。
お店の責任者ということは、担当した時間帯であれば、その時間帯の全てのお客様の満足に対しての責任と、お店で働く人たちのパフォーマンスに責任を負うことになります。
これがマネジメントチームで働く人たちの任務になってきます。
それは、マネジメントチームで働くとは、部下を通じて自己の責任を果たすということです。
オペレーションチーム(Operation Team)
オペレーションチームは、大きく2つに分類されます。
それはホールオペレーションチームとキッチンオペレーションチームです。
さらに、ホールオペレーションチーム・キッチンオペレーションチームの中には、仕事の分担に応じて各職種に仕事が分類されます。
それは、オペレーションは分業とチームワークによって成り立つからです。(※職種別バランス)
ホール職種 | K(キャッシャー) | 会計担当 案内担当 オーダー受け担当 ドリンク、デザート担当 片付け、補充担当 洗い場担当 |
キッチン職種 | D(ディシャップ) M(メイン) S(サイド) B(バック) | 料理の提供担当 メイン料理担当 サイド料理担当 仕込み、補充担当 |
評価と定着と戦力化
お店の人たちの更なる戦力化を図ることで、お客様の満足とお店の収益性、それに働く環境の改善が可能になってきます。
そのためには、お店の人たちに対する仕事の評価が必要になってきます。
それは、お店の人たちの勤務レベルを正しく評価し、その人たちの給与や時給に反映させるためのものです。
また、仕事に対する責任を持っていただくことで、働く環境の改善とよりレベルの高い店舗運営を目指してゆくためのものです。
謝辞
故五十嵐茂樹氏の生前のご厚意に深く感謝いたします。
また五十嵐由美子様におかれましてはテキストの提供ならびに掲載の許可をいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。