【明解】経営企画の仕事【5つの質問にお答えします】
経営企画の仕事って何?
大手外食企業の経営企画部を10年務め、中小企業診断士の資格も持つ著者がQ&A形式で解説します。
Q1:経営企画ってなんの為にあるのでしょうか?必要ですか?
A:経営企画の使命についてお答えします。
経営企画の使命は経営理念と経営戦略の実現にあります。そのために他の部門がやらないことを何でもやります。何でもです。
立地開発の部門がなければ立地開発を行い、購買部門がなければ購買も経営企画の役割になります。採用も労務管理も品質管理もそれが経営のために必要なことで他にそれを担う部門がなければ、それが経営企画部の業務です。
そうして担っていった役割が、業容の拡大とともに専任部署を持つだけのボリュームになると、組織デザインを行い切り出していくことになります。 しかしそれでも経営企画に残り続ける仕事があります。
それは、
- 経営戦略と事業計画の立案
- 経営戦略と事業計画の進捗管理
- 管理会計の運用
の3つです。
それって会社の規模によっては社長の仕事では?と思われるかもしれません。まさにその通りです。業容の小さいうちは社長が一身にその役割をになっていることです。
しかし成長に伴い、社長の目の届くところが限られ、考えるべきことも増えてきます。
そこで社長が意思決定すべきことに集中できるよう、スタッフとしての経営企画の役割が生まれてくるのです。 ですから組織の中での経営企画の在り方も成長の段階に応じて変わってきます。
始めは社長が担っていた役割が、やがて右腕ともいうべき人材に任されるようになり、専任のスタッフがつき、やがて数名の人員を抱え部署として独立していきます。 経験上の話ですが、10店舗前後から専任のスタッフ1名が、30店舗前後から2〜3名の部署が必要となってくるようです。
Q2:経営企画の人たちは毎日何をしているのでしょう?本当は暇なんじゃないですか?
A:経営企画の業務内容についてお答えします。
経営企画の中核業務は以下のようになります。
- 経営戦略と事業計画の立案
- 経営戦略と事業計画の進捗管理
- 管理会計の運用
そして、さらに、
となります。 この4つ目があるために暇になることはありません。
しかし、戦略や計画の検討を行っていなかったり、それが曖昧なものだったりすると時間を大いに持て余すことになります。 一方で、忙しいけれどもまるでその使命を果たしていない、ということもあります。
これも4つ目の”何でも”に起因するのですが、この”何でも”が”受け身の何でも”になってしまうと、やめてもいい業務をやり続けていたり、他の部門に任せた方が上手くいくことをわざわざやり続けたりということが起きるのです。
また、経営企画の業務を1年の仕事のサイクルで見ると、業務量のピークは期末近くにやってきます。これは当期の着地見込みを出しながら翌期の計画をまとめるタイミングとなってくるためです。
実行の精度を上げるにあたって計画の精度は重要ですので、計画策定自体も準備をしっかりするべきです。おおよそ上期が終わったところで現状分析を始め、そして下期の大半を戦略と方針を検討する期間にあてたいところです。
そのためには上期中に当期の施策の手応えをつかみ、年度の着地見込みが見える状態になっていないといけません。ですので上期は新たな施策の進捗管理を工夫し、精度を高め、あとは実績が出るのを待つだけという状態にしていかなくてはならないのです。
これが何の準備もしないまま、受け身受け身で流されて期末近くに事業計画を急に作り始めてもろくなことになりません。残業が毎日続き、他部門からは不満が出て、どうにか作った計画は精度が低く、実績と比較しようにも比較の意味がない、そんな仕事になってしまいます。
常に先手先手を打って、自らを忙しくしていける経営企画だけが、良い仕事ができるのです。
Q3:経営企画の人たちの目標設定ってどうしているのですか?
A:経営企画の業務課題についてお答えします。
経営企画の業務課題は、
- 事業計画の達成 定量指標として売上や利益の計画実績差異
- 業務効率の改善 定量指標として経営企画の外注費用や定型作業の工数削減
の2点に集約されます。
そしてそれぞれに、会社の置かれた状況に応じた具体的な取り組み課題と目標設定がされていきます。 業務効率の改善というのはまだ想像しやすいかもしれませんが、業務計画の達成に向けてといわれると、経営企画にできることが何か、分かりにくいかもしれません。
これには、
- 事業計画の精度向上
- プロジェクトの管理
の2点があります。
このうち、事業計画の精度向上については<こちらの記事>をご参照ください。
一方のプロジェクトですが、これは、
のことです。
このプロジェクトの設計、始動、管理にあたっては経営企画が積極的に関与する必要があります。
特に”新しい取り組み”、”新しい仕組み”を伴うことが多いため、既存の業務にとらわれず、経営と部門間の連携を取りやすい経営企画が主導するべきともいえます。
具体的には、新業態開発や海外進出、全社横断的なコスト削減、自社アプリ開発やM&Aなどがあるのではないでしょうか。 このようなプロジェクトを管理し成功に導くことも経営企画の課題と言えるのです。
Q4:経理じゃだめなんですか?
A:経理と経営企画の違いについてお答えします。
- 過去の数字を作るのが経理、将来の数字を作るのが経営企画
- 精度のために期日を伸ばすのが経理、期日のために精度を落とすのが経営企画
- 前例を踏襲するのが経理、前例を破るのが経営企画
- 決算が出るまでが経理、決算が出てからが経営企画
どちらも会計の数字に詳しくなければならないのは一緒ですが、その数字の扱い方は異なります。 場面によってどちらの頭で考えるのか、うまく使い分けできる人は稀ではないでしょうか。 そういった意味で経理と経営企画、それぞれ担当も分けるのが望ましいでしょう。
Q5:経営企画に配属されました。どんな勉強をしていけばいいのでしょうか?
A:求められる知識、スキルについてお答えします。
基本素養
- 店舗運営の知識、経験
- 会計 できれば簿記2級程度
- ロジカルシンキング
まず基本はこの3つではないでしょうか。
店舗運営の現場で実際に起きていることと会計の基本知識をロジカルに連携させることが求められます。そして両者の考え方や言葉の違いを翻訳し歩み寄りを図れる姿勢が必要となります。
戦力化に向けて
- 経営分析
- Excel
- スライド作成
- ファシリテーション
- プロジェクトマネジメント
経営企画人材が戦力となるために必要な知識、スキルとして5つをあげました。 資料を誰のために、何のために作るのか正しく理解するのに経営分析のスキルは欠かせないものです。
Excelとスライドを手際良く扱えることは業務効率に直結してきます。 そして会議での報告を実りあるものにするためにファシリテーションのスキルも欠かせません。
最後にプロジェクトマネジメントの素養を持つことで事業計画の達成に大きく貢献できることでしょう。
更なるキャリアアップに向けて
- 経済学
- 産業組織論
- マーケティング
- 経営戦略
更なるキャリアアップを図るために必要な4つの素養をあげました。 外食の場合、経営戦略の根幹は競争戦略になってきます。この競争戦略を理解するにはマーケティングと産業組織論の理解が欠かせないものです。
そしてこのマーケティングと産業組織論を理解するのに、一般教養程度の経済学の知識が必要となるのです。
勉強方法
勉強方法については、上にあげたもののうち社内研修で学べることは限られているでしょう。そこで、本や各種ビジネス誌などで独学するほか、外部のビジネスセミナーへの参加も検討すべきです。
Youtubeの公開動画でも良いですが、グロービス経営大学院や日経ビジネススクール、リクルート マネジメントスクールなど、やはりそれなりの費用をかけたほうが質の高い内容になってきます。
経営理念と経営戦略実現のため強力な推進力
いかがでしたでしょうか。
経営企画は、経営理念と経営戦略実現のため強力な推進力となるべき存在だと思っています。 もし、ただただ受け身の業務をこなしているだけであれば、それはいかにも残念なことです。
本記事を読んでまずは一歩踏み出してみる、そういう方が一人でもいてくれればと思います。