【5つの領域】外食企業のSDGsへの取り組み事例【18のテーマ】

近年何かと話題になる”SDGs-持続可能な開発目標”について、外食企業での取り組み事例を5つの領域と18のテーマに分けて紹介します。

  • 外食企業の事例を参考にしたい
  • SDGs担当者に選ばれたけど何から手をつけていいかわからない
  • 自社の取り組み方が正しいのか不安

という方は是非参考にしてください。

SDGsとは

”2030年、日本の総人口は2015年から800万人少ない1億1900万人となり、高齢化率は31.2%に上昇するとの推計があります。
一方、世界の人口は、爆発的な増加を続け、2015年より11億7千万人多い85億5千万人に達する見込みです。エネルギーや食料資源の需給がひっ迫するだけでなく、地球温暖化など世界規模での環境悪化が懸念されています。
こうした中で、2030年に向けて、すべての人々が豊かで平和に暮らし続けられる社会をめざし「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連サミットで採択されました。
SDGsは、世界中の国が共通して解決しなければいけない経済、社会、環境の課題を17の目標で示しており、その達成には公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。
特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資・イノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。” (農林水産省ホームページより)

ざっくりまとめれば、SDGsとは「私たち文明社会の存続が危機にある。それを脱するにはこれらの目標に期限を持って取り組まなくてはならない」ということです。
2015年の国連採択に伴い、日本政府は全国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」(首相官邸ホームページ)が設置され2016年12月には「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が決定されております。

以後、自治体、企業、大学などによるSDGsに向けた取り組みが進められております。 令和3年4月のサミットで菅首相が温室効果ガス削減目標を大きく引き上げて表明したことも、こうした取り組みの一環と言えるでしょう。

外食企業における事例

ここでは外食企業における取り組み事例を、

  • 調達とメニューにおける取り組み
  • 店舗オペレーションにおける取り組み
  • 従業員に対する取り組み
  • 地域社会に対する取り組み
  • 経営における取り組み

の4つの領域に分けて解説します。

また、国連サミットで採択されたSDGsの内容には大きく17の目標があります。各取り組みがこれら17の目標のどれに該当するのかも併せて述べていきます。

なお、取り上げた事例はWeb上で情報が入手できるもののうちの一部であり、実際には各企業において数多くの取り組みがあることを注記いたします。

自社でいかにSDGsの取り組みを進めていくのか、その課題について取り上げている記事はこちら 外食企業のSDGsへの取り組み方【事業の発展のために】


調達とメニューにおける取り組み

持続可能な農業の推進

「2.飢餓をゼロに」の目標にある持続可能な食料生産に向けた取り組みです。 「13気候変動に具体的な対策を」と「15陸の豊かさも守ろう」にも該当するでしょう。 一次産業に取り組む外食企業は多いですが、その中でも特に持続可能な農業に取り組む企業事例です。

代替肉の利用

同様に「2.飢餓をゼロに」の観点から、環境負荷が少ない植物性タンパク質で食資源不足の解決を図る取り組みがあります。 外食企業におけるメニュー事例はようやく始まったばかりですが、これから広がっていくでしょう。

省エネと再生可能エネルギーへの転換

「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に向けた取り組みです。 専らコスト的な要請からLED照明に切り替えた店舗、インバーター式の空調機に入れ替えた店舗は多いと思います。しかし再生可能エネルギーへの転換まで踏み込んでいるところはまだまだ少ないのが現状です。 そうした中、びっくりドンキーを運営するアレフは廃油や食品残渣の再資源化、工場が再生可能エネルギー100%の供給を受けるようにするなど幅広く取り組んでいます。

また、ワタミやスターバックスも再生可能エネルギー切り替えへの目標を掲げ取り組んでいます。

エシカルな調達

「8.働きがいも経済成長も」「12.つくる責任つかう責任」に向けた取り組みです。
日本国内では奴隷労働も児童労働も話題になることはほとんどありませんが、世界に目を向ければまだまだ大きな問題となっています。

新疆ウイグル自治区の強制労働問題で、ユニクロがフランス当局の捜査を受けたのも記憶に新しいところです。
特に発展途上国からの食材供給依存度の高い企業については自社が主体的に目を配る必要があるでしょう。

プラストローなどの廃止

「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」に向けた取り組みです。
プラスチックごみが環境に悪影響を与えるかもしれないという主張は以前からあり、高コストながら代替製品も数多くありました。

大手チェーンでの導入はなかなか進んでいませんでしたが、2018年6月のG7「海洋プラスチック憲章」をきっかけに社会的認知も大きく広がり、各チェーンが一気に取り組みを始めました。

森林保護

「15.陸の豊かさも守ろう」に向けた取り組みです。
紙製品を多く使うファストフードチェーンでは、FSC認証済み資材を導入するなどの取り組みがあります。
(※FSC認証-「適切な森林管理」を認証する国際的な制度)


店舗オペレーションにおける取り組み

技術革新への取り組み

「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」に向けたものです。
かつてPOSレジやオートフライヤーなどの厨房機器は、すかいらーくやマクドナルドなどの外食企業がメーカーと一緒に開発を行い、店舗運営の革新と顧客への新たな付加価値をもたらしました。
近年では卓上注文端末や順番待ち&配席システム、グルメサイト等からの予約管理システムがそれに相当するでしょう。 今後どのような技術が市場を席巻するのか各社の試行錯誤が始まっています。

ノーマライゼーション

「10.人や国の不平等をなくそう」に向けた取り組みです。 障害者雇用促進策や店舗のバリアフリー施策がこれに当たります。法令に基づく基準を満たすのは当然としても一歩踏み込んだ取り組みまで行なっているところは少ない印象です。

食品ロス削減

「12.つかう責任つくる責任」に向けた取り組みです。 ドギーバック(持ち帰り用容器)の推奨・提供のほか、出てしまった食品廃棄物のリサイクルへの取り組みがあります。これらの取り組みは安全面と衛生面、そしてコスト面の課題がありましたが、消費者への浸透や企業間の共同での取り組みによって解決が測られるようになってきました。


従業員に対する取り組み

健康経営の推進

「3.全ての人に健康と福祉を」に向けた取り組みです。 ひと昔前までは風邪をひいても怪我をしても”自己管理”で片付けられてたものですが、今や企業が率先して従業員の健康管理に取り組むようになってきました。具体的には、長時間労働の抑制、健康診断受診率の向上とその後のケア、食生活改善、運動の継続、禁酒、禁煙に関するプログラムが実施されています。

仕事と育児、介護との両立支援制度

「5.ジェンダー平等を実現しよう」に向けた取り組みです。 男性の育児休業、介護休業取得促進のほか、短時間勤務制度や地域限定勤務制度の制定、さらには女性の役職者、取締役比率向上などがあげられます。 外食企業で女性経営者というと日本マクドナルドのサラ・カサノバさんが有名ですが、他に少なくとも社内取締役に女性がいる大企業ではモスフードぐらいしか思い当たりません。こちらはまだまだ大きな課題といえるでしょう。

働き方改革

「8.働きがいも経済成長も」に向けた取り組みです。
未だに長く働き会社と店舗に貢献することが一番の働きがいだと考えている経営者がいるのは承知していますが、これからは長時間労働を抑制しながら生産性を向上させ生き生きと働ける環境作りが欠かせません。

制度面の充実とトップの掛け声は必要ですが環境面、ハード面で目に見える変革がないと現実はなかなか変わらないものです。
そうした中、24時間営業の廃止やキャッシュレス店舗の立ち上げなどで注目を集めたのがロイヤルHDの取り組みです。


地域社会に対する取り組み

子ども食堂への支援

「1.貧困をなくそう」の目標に対して、貧困家庭の子ども達に食事を提供するという直接的な取り組みです。
「10.人や国の不平等をなくそう」や「11.住み続けられるまちづくりを」にも該当しています。

食材や備品消耗品を提供するほか運営者向け衛生講習会を実施したり、コロワイドのように食堂そのものを運営するという形態もあります。
ここにあげた以外にも取り組んでいる企業は多いようです。

食育プログラム

「1.貧困をなくそう」の目標には貧困に伴う教育機会の不平等の解消が含まれています。
食べることの大切さや食べ方については、従来は家庭内に教育のウェイトが置かれていました。
そうした環境に無い子供達のために、ということで外食企業が食育に取り組む事例になります。併せて「4.質の高い教育をみんなに」にも該当するものです。

災害時の対応

「11.住み続けられるまちづくりを」に向けた取り組みです。
東日本大震災当時は、帰宅困難者の受け入れや炊き出しの実施に応じた店舗が多くありました。それを機に対応マニュアルを整備した企業も少なからずあったでしょう。

立地にもよりますが、ほとんどの飲食店は商圏の狭い商売です。地域あってこその店舗であるだけに、有事にどんな貢献ができるのかを平時から考えるようにしたいものです。


経営における取り組み

CO2削減

「13.気候変動に具体的な対策を」に向けた取り組みです。
再生可能エネルギーの利用や省エネルギーの取り組みなど具体的な行動は多岐にわたりますが、自社の温室効果ガス排出量を測定し定量的な目標を定め進捗管理まで行う取り組みが大企業中心に始められています。

コンプライアンス

「16.平和と公正を全ての人に」に向けた取り組みです。
パワハラ、セクハラのほか公正を欠いた行いを監視し抑制するための取り組みが行われています。

具体的には行動憲章の策定、お客様・従業員・取引先とのコミュニケーションラインと社内組織の整備、これら体制の運用が挙げられます。

地方自治体やNPOとのパートナーシップ

「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に向けた取り組みです。
自社だけでは知見も限られ、従来からの活動による先入観から社会のニーズとのギャップも生まれやすいものです。

革新的な取り組みを続けるためには自治体やNPOとの継続的なパートナーシップ、信頼関係の構築とコミュニケーションが必要ともいえるでしょう。


まとめ

ここまで外食企業におけるSDGsの取り組み事例を紹介してきました。
改めて5つの活動領域と18のテーマをまとめると次のようになります。

調達とメニューにおける取り組み

  • 持続可能な農業の推進
  • 代替肉の利用
  • 省エネと再生可能エネルギーへの転換
  • エシカルな調達
  • プラストローなどの廃止
  • 森林保護

店舗オペレーションにおける取り組み

  • 技術革新への取り組み
  • ノーマライゼーション
  • 食品ロス削減

従業員に対する取り組み

  • 健康経営の推進
  • 仕事と育児、介護との両立支援制度
  • 働き方改革

地域社会に対する取り組み

  • 子ども食堂への支援
  • 食育プログラム
  • 災害時の対応

経営における取り組み

  • CO2削減
  • コンプライアンス
  • 地方自治体やNPOとのパートナーシップ

次回は自社でいかにこれらの取り組みを進めていくのか、その課題について取り上げたいと思います。
外食企業のSDGsへの取り組み方【事業の発展のために】

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